| 志太郡衙の風景 20 | |
「この世とても旅ぞかし・・・」能・清経から
能「山姥の一節」 志太郡衙跡資料館には金泥書による「花鏡」など世阿弥芸論と「船弁慶」「鬼界島」などの能画が展示されている。(11月29日まで) 作者、福島久幸さんは大阪歯科医専を卒業後、満州虎林、北支石門の歩兵部隊に所属し、帰還した広島で被爆する。復員後歯科医業の合間に父親の勧めもあって謡の稽古を始めたのであるが、まず謡曲「羽衣」などの謡本を、乏しい和紙に手書きして作り上げた。24歳。(展示品はその複製である)。 医専入学以前に恩師・上村登先生や、牧野富太郎博士に導かれ植物採集に没頭し、植物分類を体得した福島さんは、医専の授業で顕微鏡を覗き組織や細胞を写し取る事は植物分類学の延長であるとして、人一倍得意だったようだ。 展示されている能画は作品の一部にすぎないが、そこに福島さんの実践=謡・能の稽古と分類学で培った描写の妙が見られると思う。 喜多流の師匠に個人稽古を受けた福島さんは師範の免状を取得する。謡曲・仕舞百番以上をこなさねば与えられない資格でもある。還暦を迎えた福島さんは喜多流能楽堂において「清経」を舞い、能面をつけて舞台に立つ最後とされた。 現在87歳の福島さんであるが、数十名を前に講演される場合、マイクを使わない。謡・能の稽古40年の賜物である。 福島さんは世阿彌・禅竹の芸論(風姿花伝・花鏡ほか)を数多く書写されている。それは優れた日本古典文学だからというだけでなく、芸術・科学および人生百般における実践指南の書でもあるのですと、よく口にされる。 | |
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